新宿区神楽坂の税理士ブログ

2016.06.30更新

みなさん、こんにちは神楽坂公認会計士税理士事務所の品川です。
3月決算の会社の申告もひと段落して、ホッとする時期です。

さて、今日は「個人事業主が開業前に開業準備のために払った費用は、経費になるの?」というテーマでお話しさせていただきます。

開業にあたっては、事前に色々と準備が必要になりますよね。例えば、
・オフィスや店舗の改装工事、ホームページの作成
・営業のためのチラシや名刺の作成
・開業のための打ち合わせ
・備品の購入 などなど。

これらの費用はもちろん開業後の事業経費として認められますので、領収書はしっかり保管しておきましょう。
開業のどのくらい前のものから経費として認められるかというご質問をよくいただきますが、これについては実際に開業準備のために支払ったものであれば、いつのものであっても経理算入できるとお答えしています。ですが、「開業準備の打合せで使いました!」と言って、数年前の飲食代の領収書をお持ちいただいても、「本当に開業準備の打合せだったのかな…?」と疑問に思われてしまいますので、特に飲食代については開業半年前くらいまでとするのが妥当です。

では、開業前にかかった費用は、開業後、どのように処理するのでしょうか。支払った費用の内容に応じて、2通りありますのでご留意ください。

ケース1)オフィスや店舗の改装工事、機器の購入のために支払った費用
設備投資に係った費用は、開業前に支払ったものであっても、固定資産として計上し、数年にわたり減価償却計算によって経費処理していくこととなります。設備投資に係る処理は、開業前に購入したものについても、開業後に購入したものについても同じとなります。

ケース2)チラシや名刺の作成代、打ち合わせのための飲食費、備品購入代
これらの費用については、開業した日にいったん「開業費」(繰延資産、貸借対照表の勘定)として処理します。そして、この開業費は、いつでも自由に、好きなだけ経費に算入することが出来ます。従って通常は、利益が出るまでは「開業費」(繰延資産)のままにしておいて、利益が出た事業年度にその利益の額を上限として「開業費償却」(経費)として処理するのが一般的です。
 例 開業費が500だった場合
   1年目の利益 △200 → 開業費はそのままにしておく
   2年目の利益 +300 → 開業費を300だけ償却して経費処理する
   3年目の利益 +400 → 残りの200を償却して経理処理する
所得税は累進税なので、理論的には、利益が沢山出て税率が一番高い事業年度で開業費を償却するのが一番節税効果が高くなるのですが、こればっかりは結果論ですからね…。将来のことは分からないので、利益が出た事業年度に償却してしまうのが良いと思います。

なお、法人の場合は、
・法人の設立登記までにかかった費用(定款作成代や、設立登記の登録免許税等)→創立費(繰延資産)
・法人設立後、事業を開始するまでにかかった費用(事業開始前の研修費、市場調査費等)→開業費(繰延資産)
と処理することとなます。
一方、設立のどのくらい前の費用から「創立費」として処理することが認められるかという点については、法人税基本通達上に、設立期間が不相当に長い場合は、設立期間中の損益を会社に計上することは出来ないと規定されていることから、3ヶ月前の費用までとするのが一般的です。
また、創立費と開業費の処理方法については、税法上、いつでも自由に好きなだけ経費処理することが出来ることとされています。

投稿者: 神楽坂公認会計士税理士事務所