新宿区神楽坂の税理士ブログ

2017.06.15更新

今年は本当に雨が多いですね…。
日本気象協会の長期予報によると、この先1ヶ月も平年に比べ雨が多く、晴れの日は少ないようです。秋の晴れ間が恋しいですね。

さて、3月決算の会社では、早くも1年の折り返し地点に来ました。上半期の実績が出て、下半期の売上予測も確度が高くなってきたところで、今年度の決算着地が見えてくる頃ではないでしょうか。
そこで今日は、「今期は思ったより利益が出そうだ!」と思われた皆さまに、是非ご確認いただきたい青色申告の特典!「少額減価償却資産の特例」について、お話しさせていただきます。

この少額減価償却資産の特例は、購入した資産の金額が30万円未満であれば、その全額を、購入して使い始めた事業年度の損金としても良いですよ、という制度なのです。この制度がどのくらいすごいかということを、以下の例で実感していただきましょう。

通常、10万円以上の資産を購入すると、固定資産として貸借対照表に計上し、耐用年数にわたって減価償却計算を行い、損金にすることとなります。従って、例えば決算対策として決算月に28万円の応接セットを買ったとしても、その期の損金にすることが出来るのは、たったの4千円となってしまいます。
(例1)
応接セット1組(28万円)を3月(決算月)に購入し、直ぐに使い始めた。応接セットの耐用年数は5年で、定額法により償却する。
定額法・耐用年数5年の償却率:0.2
当期の償却月数:決算月に購入してすぐに使い始めたので1ヶ月
当期の償却額(損金となる額):280,000円×0.2×1ヶ月/12ヶ月=4,666円

ところが、少額減価償却資産の特例を適用すると、28万円全額が当期の損金となるのです!
(例2)
応接セット1組(28万円)を3月(決算月)に購入し、直ぐに使い始めた。応接セットの購入価格は28万円であり、30万円未満であったため、少額減価償却資産の特例を適用した。
 当期の損金となる額:280,000円

ご覧いただいた通り、(例2)の方が、当期の損金が27万円超も多くなりますね。決算前に駆け込みで資産を取得した場合などに、大きな効果を発揮します。
この制度、取得価額が30万円未満である減価償却資産であれば適用できますので、器具及び備品、機械・装置等の有形資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権等の無形資産や、中古資産であっても対象となります。

しかし、誰でも際限なく使えるわけではありません。
以下、この制度を適用するための要件や、留意事項をお話しさせていただきます。

○少額減価償却資産の特例適用の要件
まずこの制度は、以下の2点を満たしている法人(または個人事業主)でなければ使うことが出来ません。
要件1)青色申告承認申請書を税務署へ提出し、税務署からその承認を得ている法人  
要件2)資本金の額が1億円以下で、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
※ 青色申告承認申請については、以下のブログもご覧ください。
http://www.shinjuku-ku-kagurazaka-tax-cpa.com/blog/2016/07/post-6-272311.html

○30万円未満かどうかは、税抜価額・税込価額のどちらで判定するの?
これは法人が適用している消費税等の処理方法によって変わってきます。つまり、法人が税抜経理を適用している場合は、消費税等抜きの価額により判定することとなり、一方、法人が税込経理を適用している場合は、消費税等込みの価額により判定するとなります。
なお、消費税の免税事業者となっている法人(設立2期目以前の法人や売上高1,000万円未満の法人など)は、必ず税込経理をしているはずなので、消費税等込みの価額で判定することとなります。

○特例を受けられる上限は300万円
この特例の適用を受けられるのは、1事業年度で300万円までとなります。
従って、(ありえない話ですが)1事業年度で応接セット(1組28万円)を12組買った場合、10組目までは全額を損金とすることが出来ますが、11組目と12組目は原則通り固定資産に計上し、減価償却計算を行うことが必要となります。
(例3)
 280,000円×10組=2,800,000円 < 3,000,000円
 280,000円×11組=3,080,000円 > 3,000,000円
→ 10組目までは少額減価償却資産の特例を適用することが出来るが、11組目以降は上限の300万円を超えてしまうため、特例を適用することが出来ない!

なお、設立1期目や決算期変更を行った場合等、事業年度が1年未満となる場合には上限額はその分小さくなるので注意が必要です。
(例4)
3月決算法人だが、当期が設立1期目で、6月に設立した。
当期の月数:10ヶ月
特例適用の上限額:300万円×10ヶ月/12ヵ月=250万円

○損金経理が要件となっている
「損金経理が要件」とは、「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することが必要」ということです。従って、決算書上は利益を出したいから資産として計上し、法人税の計算上は別表調整で損金とするということは認められませんので、気を付けてください!!

○購入して使い始めた事業年度に損金としてください!
少額減価償却資産の特例は、購入して使い始めた事業年度において、その取得価額の全額を損金とすることができるという制度です。従って、使い始めた事業年度においていったんは資産として計上し、その後の事業年度で全額損金経理をしたとしても、税金の計算上は損金として扱うことはできません!

長くなってしまいました…。最後までお付き合いいただき、有難うございます…。
気を付けなければいけないポイントはいくつかありますが、とても便利な制度です。是非、活用してくださいね!

投稿者: 神楽坂公認会計士税理士事務所